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●「母連れ狼」末尾ルコ(アルベール)、母(うたちゃん)の日々、『冬の華』、高倉健の「人間の重み」「人生の重み」、そして美。 [「言葉」による革命]

わたしはアートでロックでハードボイルドでポップでジェントルな末尾ルコと名乗り、しかし地元ではふつうアルベールなのですが、「恋多きヒヨコ」でもあります。原則いつも母(うたちゃん)と行動を共にし、車いすを押しておるそのイメージから「母連れ狼」とも名乗ります。
そう、最高の介護を超えるべく。

・・・

『冬の華』の冒頭、高倉健は池部良を刺し殺す。
池部良演じる男とは懇意にしていたが、やくざの世界のトラブルで殺さざるを得ないと、高倉健演じる男は信じていた。
しかし殺した男には小さな娘がいる。

高倉健は刑務所から少女へ手紙を送り続ける。
「ブラジル在住の叔父」と名乗り。
そして出所。

高倉健はもとのヤクザの世界に戻る。
娘に会いたいが会えない、会えるはずもない。
刑務所ではいつしか、(いつか娘に会える)ことを心から待ち望んでいた。
しかし彼女の父を殺したのは自分だ。
会えるはずもない。
ふと口に出る「なんで会えるなんて思ってたんだろうなあ」という台詞が重い。

それだけではなく、『冬の華』の中で高倉健はよく一人で部屋にいるのだが、これらシーンがとてもいい。
孤独な人間…というだけでなく、あまりに重い人生の荷物を抱え込んだ人間の『重さ』がストイシズムとともに表出される。
何も言わない、表情を変えることもない、しかしそんな高倉健の佇まいから、圧倒的人生の重量が立ち上る。
こんな表現ができる俳優、確かに他にはいない。
黙っているその姿に息を呑み見入ってしまう。
何も喋らないその表情に心を持っていかれる。
そのアップの表情が一本の映画作品を決定づけ、牽引していく。

もちろん『冬の華』は、東映の任侠シリーズなどを卒業した後の「高倉健+降旗康男」ラインの中でも際立った内容となっている。
映像も破綻がない。
ちらちらと雪が舞う暗闇も美しく濃厚だ。
脇を固める小林稔二にしても峰岸徹にしても、驚くほど鋭い表情をしている。
そして女子高生役の池上季実子の清々しい美しさ。



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(。・_・。)2k

本当ね この歳で 独りでいるって
重い何かを抱えてるものですよね
マジで 重いんだなぁ これが

by (。・_・。)2k (2021-06-08 07:09) 

hana2021

>孤独な人間…というだけでなく、あまりに重い人生の荷物を抱え込んだ人間の『重さ』
出所してからも、服役中と変わらない生活、心境の変化がなかったと言う事でしょうか。
男と言うものは、大なり、小なり、責任と守るべき重さを持っているもの。その辺りが何とかなると楽観的に生きる、私達との違いかと思います。
高倉健その人が、偉大な映画俳優としてのイメージが出来上がったせいで、孤独に生きざるを得なかった、その辺りも関係していると考えられますけれど。
しかし大仰に、前面に出して、男泣きしたりする現在の俳優の演技との違いはおおいに感じられます。
言葉や表情、行動からでなく、その佇まいで全てを表現出来る。私も思い浮かびません。
by hana2021 (2021-06-08 11:44) 

ゆうみ

最後から三行目美しい文章だわ
by ゆうみ (2021-06-08 18:39) 

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