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●伊藤薫「セントーン」に関し、「技のアピール」について検証するつもりが、いつしかプロレス史上屈指の「省エネ必殺技」談議に。 [「言葉」による革命]

●伊藤薫「セントーン」に関し、「技のアピール」について検証するつもりが、いつしかプロレス史上屈指の「省エネ必殺技」談議に。

末尾ルコ「プロレスの話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

かつて伊藤薫という女子プロレスラーがいて、と書こうとして一応ネットチェックしてみたら、まだこの人、現役なのですね、失礼いたしました。
で、伊藤薫、全日本女子プロレスの選手だったのだけれど、現在は非常にお太りになられているのですね。
かつての面影が、無くはないけれど、ほとんど無い。
それはさて置き、全女時代、顔も体形もプロレススタイルも比較的平凡で、ビデオで試合を観ている場合にはつい早送りしたくなるタイプだったのだけれど、実はそんな伊藤薫にとても印象的なシーンがある。
相手レスラーが誰だったかは忘れたが、リング上で大の字になっている間に伊藤はコーナーポストへ上り、

「セントーン、行くぞ、こんにゃろう!」

とか叫びながら、「本人曰く」セントーンを相手にぶちかましたのである。

しかしプロレス技「セントーン」にはいくつかのバラエティがあると思うけれど、その基本ムーヴは「相手に対して、背中から落ちる」のはずなのだが、その時伊藤がぶちかましたのは、

「コーナーポストから両脚揃えて飛び降りて、そのまま相手の上へ着地するだけ」

という「技」だった。

(え?これ、セントーン??)とその時首を捻り、いまだにこの件については首を捻ったままである。

それにしても、これが「セントーン」という技であるなら、実に楽にマスターできる技であって、しかも「セントーン、行くぞ、こんにゃろう!」的な掛け声を挙げたということは、本人の中では「大技」という意識があったのだろう。
となれば、これだけやる側にとって「楽な大技」は滅多になく、その割にやられる側はキツイ技である。
と言うのは、同じくコーナーポストから落下する技として最も有名なニードロップの場合、多くの場合は相手に当たる前に体重を逃がすのであって、ところが伊藤セントーンは揃えた両足をそのまま相手の腹部へヒットさせるので、コーナーから跳んだ全体重がかかってくるのである。
そしてもちろん技を繰り出す伊藤薫本人には、ほとんど負荷はかからない。
それは例えば棚橋弘至のハイ・フライ・フロウなどと比較すればよく分かるだろうけれど、だいたいこの技の場合は、「かけた棚橋の方がキツそう・痛そう」なほど大きな負荷がかかっている。
対して伊藤薫セントーン、自分はコーナーポストから普通にピョ~ンと跳ぶだけで、技をかけられる相手だけはしっかりとしんどい思いをするのである。
これはひょっとしたら、プロレス史上屈指の「省エネ必殺技」かもしれないと、今さらにながら思った次第である。

(伊藤薫の使った「セントーン」のすべてが「こう」だったかは検証しておりません)

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いっぷく

伊藤薫や渡辺智子らの世代は、のし上がってきたというより上が抜けてプッシュされるようになった印象が強いのですが、それにしてはしぶとくて現役が長いですね。

その「セントーン」は、馬場とクラッシャー・ブラックウェルの気まずいシーンを思い出してしまいます。
タッグマッチだったと思いますが、誰がパートナーだったかも忘れてしまうほどのありふれた試合なのに、そのシーンははっきりと覚えています。
クラッシャー・ブラックウェルが倒れた時、馬場がそこに乗っかって、佃煮を作るように足踏みをしたのですが、人間の、しかもブラックウェルのビアダルのごとき丸い体では乗っかっている方がバランスを崩すのは子どもにもわかることで、案の定、馬場はゴロンとゆっくり倒れてしまい、しかもすでに晩年の馬場だったのでしばらく起き上がれず、試合がそこで止まってしまったのですが、観客は、見て見ぬふりが半分、我慢したけどやっぱり笑わせてもらうという感じの嘲笑半分という、実に重いシーンでした。
何がまずいかというと、ただ相手の体にゆっくり乗るだけでプロレスの攻撃としている手抜き、足踏みが揉み器を連想してしまい、ブラックウェルがダメージどころか逆に健康になってしまうのではないかという懸念(笑)、そして自分が「攻撃」したのに自分でひっくり返っている相手を無視した非プロレス的な自作自演←実際ブラックウェルは間が持てない感じで横になりながら馬場を眺めていました
そして、美樹克彦に似た松永アナが、それを大技のように実況したことで、おそらく視聴者も白けてしまったこと。
馬場が全日本を作り、新しい必殺技として、河津掛けから河津落としを披露した時、強引に首を掴まれてマットに叩きつけられるのだから、ダメージはあるのだろうけど、自分がレスラーだったら、バックドロップよりこっちのほうがダメージ少なそうだからいいな、なんて思いました。
見るものにそう思わせたら、それはレスラーの負けなんですね。

ネットの世界では、検索順位を上にするSEOの対策事業がひとつの大きな市場なのですが、グーグルとしては、中身の薄いサイトが、テクニックだけで上位になったら、検索エンジンの信用にかかわるので、中身のきちんとしたサイトが評価されるようなアルゴリズムを、今も次々加えています。
そこで、SEO事業者としては、「安楽単はだめ」というのが今は常識で、要するに、「安い」「楽な」「簡単」な小細工ではグーグルは見破ってしまう。自然に見せるにはコストと手間暇を惜しんではだめなのだというのです。
いうなれば、テストのためのカンニングの仕組みを、きちんと勉強するのと同じぐらいの手間暇をかけろ、というような感じでしょうか。
プロレスも、すごいこと「のように見える」ことを観客に見せるには、本当にすごいことをするぐらいの覚悟や「すごいこと」にかわる別の痛みや苦労をしなければならない。手抜きは決して観客は見逃さない、ということだと思うのです。
まあフットスタンプ自体は馬場のマッサージ攻撃と違い、相手にダメージは与えられるようには思いますが、自爆したときのリスクがある方が、観客としては認めやすいですね。
by いっぷく (2017-12-14 09:28) 

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