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●本当の「贅沢」とは何か?「プロレス熱戦譜」で膨らんだものは? [「言葉」による革命]

●本当の「贅沢」とは何か?「プロレス熱戦譜」で膨らんだものは?

末尾ルコ「プロレスの話題で知性と感性を鍛えるレッスン」

「プロレスは観客あってのもの」という言い方が以前からあって、つまり一般スポーツなら試合をして、その記録さえ正確に取っておけば成り立つけれど、プロレスは「見せるスポーツだから」試合の記録だけでは意味がないという話である。
しかしこれはかなり大雑把なものごとの語り方であって、一般スポーツであっても「プロであればどうなのか」という疑問があるし、実はわたしにはプロレスを「記録だけ」で楽しんでいた時代もあるのである。
プロレス雑誌が月刊誌だった時代はそもそもプロレス団体自体が少なくて、それら団体の地方巡業を含めた試合結果を前座の一試合目から誌面に載せているページがあり、「プロレス熱戦譜」と名付けられていた。
「プロレス熱戦譜」に記載されているのは、興行日程と会場、そして各試合の決着技と試合時間などだった。
例えばある試合でグレート小鹿が高千穂明久に勝ったのであれば、

グレート小鹿(12分34秒 片エビ固め)高千穂明久

などと記載される。
今考えると、(全試合秒数まで記録していたのか?)と首を捻らなくもないが、きっと記録していたのだろう。
男子プロレスの場合は、「フォール決着」の場合は、「体固め」「肩エビ固め」「回転エビ固め」など、つまり「3カウント取った技」が記載され、「ギブアップ決着」の場合は、「裸締め」「コブラツイスト」などと技の名が記載されていた。
ところが女子プロレスの熱戦譜には、「フォール決着」でも、「ブレーンバスター」とか「バックドロップ」とか、「決着を付けた大技名」が書かれていたのが、プロレスファンの間でネタ化していた。
で、わたしが「プロレス熱戦譜」を見るだけで一体何を楽しんでいたのかというと、

「想像を膨らませていた」のである。

「プロレス熱戦譜」に記載されている最小限の情報から、(へえ~、この日は倉敷でハーリー・レイスがタッグへ出たのか。大熊からフォールを取っているけれど、きっと余裕の試合だったんだろうな)とか、薄暗い地方のプロレス会場で行われた試合内容を自由に想像する。
現在の掌の中で身も蓋もない具体的映像が手に入ってしまう時代しか知らない者には理解し難い贅沢な時間だった。

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いっぷく

それは東京に住んでいても同じで、地元で興行があるのは年に1~2回ですし、いつも見に行くとは限らないし、テレビ中継はメインとセミぐらいなので、熱戦譜は気になりました。
ひとつは、熱戦譜は若手レスラーの序列を知る手がかりになりましたね。昔は前座は派手な技を使わずガチンコで、といわれていましたし。今はもう事情が違うと思いますが。

あと地方巡業で、ときどき馬場からフォールをとってしまうガイジンがいて、当時はそれで大変ショックを受けるのですが、それは興行会社からすると思惑通りで、そのシリーズを盛り上げるためにそのレスラーの価値を高めるということに後になってから気づきました。
以来、地方巡業は、大きな会場のためのストーリーづくりであるという前提で、この取組と、この勝者はどういう意味だろう、と考えるようになりました。
たとえば、馬場は1968年に、クロンダイク・ビルという三流レスラーにフォール負けをしているのですが、このときは、長いシリーズなのにスカルマーフィーぐらいしか名のあるレスラーが来ていなくて、タイトル戦線を盛り上げるために、マーフィー・ビル組にアジアタッグまで取らせてしまったので、ビルを強敵にしなければならない事情があることがわかりました。最終戦ではBI砲が、マーフィー・ビル組に完勝しています。
ボビージャガーズには、馬場は2敗しているのですが、そのうちの1敗は、ブッチャーにケガをさせられて5針縫ったときで、試合のできるコンディションではなく、半ばガチ負けだったようです。もう1回はチャンピオンカーニバルを盛り上げるために馬場が取りこぼした形を取ったのではないかと思います。それにしても、馬場に2勝したガイジンはブリスコとレイスとデストロイヤーとブッチャーぐらいで、どんな経緯であれ偉業なのですが、たぶん、当時はスタンハンセンよりもボビージャガーズの方を馬場は買っていたのではないかなと思います。

by いっぷく (2017-06-03 01:11) 

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