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小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇 ブログトップ
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小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇 14 見当たらなかったソードテール [小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇]

昨夜ぼくは瀕死のソードテールを探した。
水槽の中にはそれを含めて4匹のソードテールがいるはずだった。
大きめの水槽で、ときに魚を探すのが難しいことがある。
ぼくは瀕死のソードテールを見つけることができなかった。
水槽の底にも、水面近くにもいなかった。 

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小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇 13 瀕死のソードテール [小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇]

真夏を前にして、一匹のレッドソードテールの命があとわずかに見える。
取り残されたメスのソードテール。
今日、そのソードテールは水槽の底で、自由の利かなくなった体の苦しさにただ耐えている。
明日まで生きることができるだろうか。
いつまでになるか分からないが、ぼくはこのソードテールを見続ける。

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小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇 12 [小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇]

昨日の晩のことだった。
散歩に出たとき、空は曇っていた。
霧に近い雨の気配が少しだけしたけれど、ぼくは傘を持って出なかった。
5分も歩かないうちに、雨粒は大きくなってきた。
ぼくは舌打ちをした。
そして急に思い出した。
「今日はほとんど魚たちを見てないな」
もっと見なければ、魚たちを・・ぼくは少し早足で家の方へ引き返した。
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小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇 11 [小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇]

ソードテールのオスはふつうソードテールのメスよりも小さいけれど、
下半身に雄々しい剣を備えている。
刀ではなくて、剣。
つまりソードテールのオスは、武士ではなくて騎士なわけだ。

騎士道というくらいで、
騎士は女を讃えるというイメージがあるけれど、
ソードテールのオスはちょっとメスにちょっかい出し過ぎだ。
メスが好もうが好むまいがおかまいなし。
突撃したいときに突撃するのがソードテール。
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小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇 10 [小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇]

あの子はどこへ行ったんだろうね。
あの子って?
ソードテールの子ども。
ああ、それなら真ん中を泳いでいるじゃない。
あ、もうあんなに大きくなったのか。
あんなに小さかったのにね。
ああ、今にも他の魚に食べられそうだった。
それがあんなに元気な雌ソードテールになったのか。
なんか嬉しいね。
ああ、そうだね。
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小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇 9 [小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇]

熱帯魚・・の話ではないけれど。
かなりの湿気の中、ぼくは小さな路地を歩いていた。
路地の縁には側溝がある。
汚い汚い水が流れる側溝だ。
けれど始めて気づいた。
細長い魚がいる。
黒っぽい背を見せて、何匹も動いている。
こんな汚い水の中で、どうしてこんなに元気なのだろう。
それともこいつらは、
「おれたちは不幸だ。けれどこれを変えることはできないのか」と神に問うているのか。
まるでヨブのように。
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小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇 7 [小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇]

二匹のソードテール。しかも雌。
二匹とも細長いフンをぶら下げて泳いでいた。
それをオスが追いかけまわす。
フンつきの女でもソードテールは平気。
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小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇 5 [小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇]

コリドラスはナマズの仲間だという。
いつも水槽の底で物思いに浸っているところはたしかにナマズ風。
たまに狂ったように
上下左右に踊りだす。
ナマズの仲間だけに、
「ひょっとして大地震」なんて考えたりするけれど、
今のところコリドラスの動きと地震が一致したことはない。

小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇 4 [小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇]

グッピーたちは、
いつも人格を見出すのが難しい。
人格でなく魚格?
いや、やはり人格だ、
人間が感じれば、
釣鐘草にでも人格を見つけることができる。

「グッピーは子どもなんだろうか」
誰かが言った。
「そんなことはないだろうけど、
子どものように見えることは確かだな」
ぼくは言った。 

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小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇 3 [小説 熱帯魚のハート・その喜劇と悲劇]

1年前、オトシンはとても強かった。
水槽の中のほかの魚たちを守るように、
何の欲もなく、
ただ愛に満ちて、いつも口づけをしていた。
水槽の壁に口づけする姿は
まるで光に対して口づけしているようだった。

そのときオトシンは6匹?
オトシンが見守っていた魚たちは、
コリドラス、プレコ、グッピー、ベタ・・。

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