末尾ルコ（アルベール） さん
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●実は過激にしてアナーキーな少年漫画『いなかっぺ大将』、「大ちゃんのチュー」とは？ [「言葉」による革命]
●実は過激にしてアナーキーな少年漫画『いなかっぺ大将』、「大ちゃんのチュー」とは？
末尾ルコ「漫画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」
漫画もアニメも基本的に人間を平面的に表現するのが持ち味であって、多少の陰翳や立体感を出す場合はあっても、「まるで実物のような」、つまり西洋絵画の肖像画のような境地は望まれていないし、描く側もそこまでの表現は望んでいなかったと、大雑把であるが日本の「絵の歴史」を概観すれば誰でもそんな印象を持つ。
それは浮世絵やそれ以前の武将などを描いた作品を見ても同様で、よく知られる織田信長豊臣秀吉、あるいは徳川家康などの画は、それなりに実物の特徴を捉えているのかもしれないが、（もうちょっと精密に描く習慣があったな、この人たちの本当の姿がもっとよく分かったのに）と残念な気分になることもしばしばである。
といった話と関係ないようで関係あると思うけれど、『いなかっぺ大将』である。
天童よしみ（吉田よしみ）が『いなかっぺ大将』のテーマソングを歌っていたのだと最近知った自らのお粗末さを噛み締めながら、なぜか弟がBOOK OFFで原作コミックスを一冊買ってきたので読んでみるとこれがスゲエ！
『いなかっぺ大将』は川崎のぼるによる少年漫画で、わたしの中のイメージではもの心ついた時期には既に「存在していた」、極めて少年たちの生活に密着していた人気漫画である。
それほどまでに子供達に浸透していた漫画だけに、「明朗漫画」だったという思い込みがあった。
明朗快活な主人公「大ちゃん」が明朗快活に大活躍する漫画であると。
しかし平成の今、読み返してみると、確かに明朗は明朗なのだけれど、実にアナーキーでポップ、時に濃厚な「毒」さえ感じさせる、とんでもない（←いい意味で）漫画なのである。
とにかく主人公の「風大左衛門」の一挙一動から目が離せない。
定番の服装は袴であって、その下には褌を着用しているのだけれど、しょっちゅう「褌無し」の状況になり、さらに袴がまくれ上がる羞恥シーンが出現する。
しかしわたしの知識では、「袴」は女性のキュロットスカートやワイドパンツのようなもので、つまり「２本の脚を差し込む作りであって、風にまくれて股間が露出する」ようなものではないはずだが、「大ちゃん」の袴に関してはそんな一般常識は完全に無視される。
特にスゴイのが、「大ちゃん」が英語かぶれになるなる回であり、「褌」を「クラシック・パンツ」、「小便」を「イエローウオーター」と呼び、ネグリジェを着て、同居人の「キクちゃん」やその父親に対して猛烈に「チュー」を迫る。
その「チュー」を迫る時の唇が、あたかも「奇怪な水中生物」のようなチューブ状と化し、（いやあ、こんな唇で迫られては、大人でも逃げ回るだろうなあ）と、呆れ、感心するのである。
末尾ルコ「漫画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」
漫画もアニメも基本的に人間を平面的に表現するのが持ち味であって、多少の陰翳や立体感を出す場合はあっても、「まるで実物のような」、つまり西洋絵画の肖像画のような境地は望まれていないし、描く側もそこまでの表現は望んでいなかったと、大雑把であるが日本の「絵の歴史」を概観すれば誰でもそんな印象を持つ。
それは浮世絵やそれ以前の武将などを描いた作品を見ても同様で、よく知られる織田信長豊臣秀吉、あるいは徳川家康などの画は、それなりに実物の特徴を捉えているのかもしれないが、（もうちょっと精密に描く習慣があったな、この人たちの本当の姿がもっとよく分かったのに）と残念な気分になることもしばしばである。
といった話と関係ないようで関係あると思うけれど、『いなかっぺ大将』である。
天童よしみ（吉田よしみ）が『いなかっぺ大将』のテーマソングを歌っていたのだと最近知った自らのお粗末さを噛み締めながら、なぜか弟がBOOK OFFで原作コミックスを一冊買ってきたので読んでみるとこれがスゲエ！
『いなかっぺ大将』は川崎のぼるによる少年漫画で、わたしの中のイメージではもの心ついた時期には既に「存在していた」、極めて少年たちの生活に密着していた人気漫画である。
それほどまでに子供達に浸透していた漫画だけに、「明朗漫画」だったという思い込みがあった。
明朗快活な主人公「大ちゃん」が明朗快活に大活躍する漫画であると。
しかし平成の今、読み返してみると、確かに明朗は明朗なのだけれど、実にアナーキーでポップ、時に濃厚な「毒」さえ感じさせる、とんでもない（←いい意味で）漫画なのである。
とにかく主人公の「風大左衛門」の一挙一動から目が離せない。
定番の服装は袴であって、その下には褌を着用しているのだけれど、しょっちゅう「褌無し」の状況になり、さらに袴がまくれ上がる羞恥シーンが出現する。
しかしわたしの知識では、「袴」は女性のキュロットスカートやワイドパンツのようなもので、つまり「２本の脚を差し込む作りであって、風にまくれて股間が露出する」ようなものではないはずだが、「大ちゃん」の袴に関してはそんな一般常識は完全に無視される。
特にスゴイのが、「大ちゃん」が英語かぶれになるなる回であり、「褌」を「クラシック・パンツ」、「小便」を「イエローウオーター」と呼び、ネグリジェを着て、同居人の「キクちゃん」やその父親に対して猛烈に「チュー」を迫る。
その「チュー」を迫る時の唇が、あたかも「奇怪な水中生物」のようなチューブ状と化し、（いやあ、こんな唇で迫られては、大人でも逃げ回るだろうなあ）と、呆れ、感心するのである。
末尾ルコ
革命・芸術 末尾ルコ（アルベール）
![[ダイヤ]](https://blog.ss-blog.jp/_images_e/82.gif)
〈「言葉」による革命・「美」による革命〉提唱・推進
「末尾ルコ 会話芸術」創始者。
「末尾ルコ 革命広場」主宰。
〈「言葉」による革命・「美」による革命〉提唱・推進「末尾ルコ 会話芸術」創始者。「末尾ルコ 革命広場」主宰。
川崎のぼるは、さいとう・たかをの弟子らしい精緻な描写と、その一方で関東で言うと永井豪のようなエッチなギャグを描き加えてしまう漫画家ですね。
「巨人の星」でも、飲み屋の親父とか、端役の描き方にそれが伺えますが、「いなかっぺ大将」はストーリーから自分の作品なので、思いっきり描き放題だったように思います。
「いなかっぺ大将」の最初は、「アニマル1」の主人公のようなカッコイイ青年のはずだったのですが、大柿矢五郎が、「風大左衛門」という名前を聞いて、プッと吹き出したあたりから、だんだんギャグになってきて、西一が出てきて完全にギャグまんがになってしまったように記憶しています。
小学館の学年誌で連載していて、読者はだんだん学年が上がっていくわけですが、「いなかっぺ大将」は同じ学年で連載が続いたために、小学校で留年という無理な設定もありました。
私が覚えているので強烈だったのは、ホテルのユニットバスの使い方がわらからなくて、便所にお湯を入れて体を洗い、風呂に小便をした話ですね。
でも私としては、「いなかっぺ大将」の花ちゃんとか、巨人の星のスケ番には、タイガーマスクのルリ子さんに対する気持ち、すなわちエッチな気持ちになりました。
昭和40年代、雑誌名とタイトルは忘れましたが、川崎のぼるの単発もので、中学生がおならの臭いをかかがせ合ってたたかう話がありました。スボンを脱いでおならを引っ掛けるシーンで「ストレートで来やがった」という台詞があり、それで私は、ストレートが「直線」だけでなく「直接的」という意味があるのだと学びました。
その漫画は、主人公が中学を卒業して就職するために汽車に乗ったら、クラスの仲間が駅まで見送りに来て、車窓に向かって「ストレートで来やがった」という最後だったと思いますが、昭和40年代の漫画は、まだ中学卒業の集団就職で汽車に乗るというシーンがラストだったんですね。
まあ川崎のぼるは、そういう漫画を描く人だということです。
昔の漫画は、「天才バカボン」にしろ「ドラえもん」にしろ、毒がありました。
とくに現在アニメで放送する「ドラえもん」は原作とは別物ですね。
「ブラックジャック」を加山雄三が若大将フィーチャーの実写で演じたら批判が出ましたが、私から見ると、アニメで原作まんがのイメージを壊している方がよほど深刻だと思うんですけどね。
by いっぷく (2018-02-27 02:26)