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●とてつもないクオリティ、「みだれ髪」聴き比べ、美空ひばり、田川寿美、藤圭子、あるいは演歌とマンネリの関係? [「言葉」による革命]

●とてつもないクオリティ、「みだれ髪」聴き比べ、美空ひばり、田川寿美、藤圭子、あるいは演歌とマンネリの関係?

末尾ルコ「音楽の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」

演歌というジャンルの歌は無数にあって、正直なところ、そのほとんどは「同じ歌のように」聴こえる。
曲想もメロディも歌詞も、どうも似たような作品が多いのは演歌に特有な現象ではないだろうし、例えばわたしはさほど詳しくないが、ブルーズの曲も多くは似たように聴こえることも事実である。
とは言え演歌を聴いていて、(もっとどうにかならないかな)と感じることしばしばではある。
せっかく圧倒的な歌唱技術に加え、「人生そのもの」を歌い上げることができる歌手が多く揃っているジャンルなのだから。
例えば市川由紀乃。
その歌唱技術は現在日本で最もレベルが高い一人だと言えるし、精神性、さらにステージ上での「見栄え」も申し分なし。
まさに演歌界の至宝に一人だ。
ところが市川由紀乃の近作3曲、「心かさねて」「はぐれ花」「うたかたの女」を聴いて、そりゃあ市川由紀乃が歌っているからよく聴こえるけれど、「曲自体」がいいとは思えない。
ありがちな演歌の歌の一つに感じてしまうのですね。

何と言いますか、こういうことをあまり言っちゃいけないのかもしれないけれど、演歌の作詞家・作曲家の人たちは、「ものすごく力を入れて作る」場合と、「まあまあこのくらいで」という感じで作る場合がかなり極端に出ているのではないか。

例えば、このところわたしは美空ひばりの「みだれ髪」に魅了されているのだけれど、この歌は作詞が星野哲郎で、作曲が船村徹だ。
ともに日本歌謡界の大御所であり、名曲ができて当然・・・と言いたいところだけれど、それにしても歌詞といい、曲といい、凄過ぎる。
歌詞のクオリティの高さは、平均レベルの演歌歌詞と比較すれば、遥か彼方と言いたいくらいの素晴らしさだ。

もちろん1987年、美空ひばりの復帰第一作として企画された作品であり、大御所の二人としても、「絶対に下手な歌は作れない」状況であり、どれだけ精魂傾けて作ったかは、歌を聴けばすぐに分かる。
ただ、それにしても、「普通の演歌楽曲」とあまりに差がありすぎるなあ、いつも「みだれ髪」ほどのクオリティは望まないにしても、作詞家・作曲家の方々、普段からもう少しクリエイティヴィティのレベルを上げてほしいなあ、というのが新しい演歌ファンのわたしの素朴な希望である。

それはさて置き、多くの歌い手にとってあこがれの「みだれ髪」、3人の歌唱を並べてみた。
美空ひばりはもちろん別格だが、わたしは田川寿美の緊迫感溢れる歌い方が大好きなのである。

BKTAiZ08 みだれ髪 田川寿美 160527 vL HD
https://www.youtube.com/watch?v=np2fUrGCwUY

藤圭子[ハート]追悼:みだれ髪
https://www.youtube.com/watch?v=5PSA1Yu0GIA

みだれ髪 美空ひばり
https://www.youtube.com/watch?v=XBN60E6t4-A


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いっぷく

>「ものすごく力を入れて作る」場合と、「まあまあこのくらいで」という感じで作る場合がかなり極端に出ているのではないか。

商業紙誌の記者、編集者も似たようなもので、むしろ惰性が普通で、たまに心を入れ替えて頑張る、ぐらいのペースではないでしょうか。昭和プロレスで、地方巡業はテキトーに流して、テレビが入る東京の大きな会場だけ頑張るとか。
作曲の世界はよくわからないのですが、今第一線の人は、なんとか商品化できる65点の作品でお茶を濁して細く長くこの仕事を続けようという感じですね。いつも100点を目指すとどこかで自身が破綻してしまうような気がしますし。

>ありがちな演歌の歌の一つに感じてしまうのですね。

ズバリ、パクリと言うか、似ているものもありますね。パクリと言えば、具体的に名前を出したらそれこそキリがないぐらい、作曲の世界は「パクリ」が当たり前だといわれていますが、どこかで聴いたことあるなあ、あの曲と似てるなあという経験は何度もあります。パクリではなくても、同じ作曲家だと同じ傾向ということもあるでしょうし。適当にパクリ、ワンパターンなど、何も出なければそれなりのものでお茶を濁し、という感じで無理せずやってるんでしょうね。

>美空ひばりはもちろん別格だが、わたしは田川寿美の緊迫感溢れる歌い方が大好きなのである。

三者三様で私ごときには論評ができないですね。歌い手の評価というのは、なかなか難しいです。
音感、声の質、そういう技術的なものはあるでしょうし、テンポやメリハリ、声の出し方などによる表現も大事でしょうね。あとは詞の描く世界とどれだけマッチした歌い方か、ということもあるでしょうね。

さらに私は、「リアル」と「芸」は区別して両立させるという見方で、要するに私生活がどうだろうがいい仕事をすればいいと思いますが、ただし、いい仕事の背景には、その人のリアルな人生が反映されている、というふうに見ているのです。意味づけですね。そこでつい歌手も、どういう生き方をしてきたのか、ということに関心を寄せるのです。

以前書いた「星影の小径」も、ゴスペルとして声量豊かに歌っているグループがいて、それは技術的にはものすごくうまいんですよ。でも評価としてはちょっと違うなあと。魚を三枚におろす微妙な包丁使いに高級な牛刀をもってくるような感じで。あの歌はもっと素朴で、1950年代に、朝鮮訛りの抜けない小畑実が、コメヘレ英語で懸命にアイラブユーと歌うところに胸を締め付けられる切なさがこみ上げてくるものです。それが英語が定着した80年代になってちあきなおみで完結したと思うので、それ以降の方は、そりゃ小畑実の英語よりはネイティブに近いかもしれないけど、音響もずっとよくなっているけれど、でもそれだけじゃ小畑実の上にはならないだろうというところですね。
by いっぷく (2018-06-27 05:00) 

hana2018

美空ひばりの「みだれ髪」を今、youtubeで聴きながら書いています。
作曲者である船村徹は、栃木の船生の出身者。そこから船村の名にしたと聞いています。また日光の道の駅には船村徹記念館まであり、そこそこの来館者がいる模様です。
時には力強く、また女性らしさを前面に出した美空ひばりの歌唱は、今さらですけど圧巻の上手さに思います。
言ってはなんですけど、レコード大賞で最優秀歌唱賞を受賞した和田アキ子の「あの鐘を鳴らすのはあなた」については、それ程とは思えずにいるのです。
大声で怒鳴るような歌い方は、彼女のスタイルそのものながら、あの曲もあるドラマの中で天海祐希が軽やかに歌った時に、こんなに良い曲だったのかと、初めて思ったくらいに。
他の歌手がカヴァーした方が良いと思われる場合もあるものですね。


by hana2018 (2018-06-27 10:38) 

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