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●映画『陽炎』の樋口可南子、かたせ梨乃に今誰か匹敵する女優は存在するのか?~あるいは高品格の無表情な凄み。 [「言葉」による革命]

●映画『陽炎』の樋口可南子、かたせ梨乃に今誰か匹敵する女優は存在するのか?~あるいは高品格の無表情な凄み。

末尾ルコ「映画の話題で、知性と感性を鍛えるレッスン」


五社英雄監督の『陽炎』は女胴師「不知火おりん」に扮する樋口可南子主演のエンターテインメント映画だ。
この場合の「エンターテイメント」という言葉は多義的で、『陽炎』の場合は、「適度なアクションあり、適度なエロあり、適度な任侠あり、適度な時代物感あり」などが観客を愉しませる要素として2時間弱の中にたっぷり盛り込まれている。
しかしこれら要素が盛り込まれたメジャー映画が昨今の日本に存在するだろうか。
そもそもである、出演者を見てみよう。

樋口可南子
仲代達矢
本木雅弘
荻野目慶子
かたせ梨乃
川谷拓三
竹中直人
白竜
清水ひとみ
うじきつよし
芦屋小雁
高橋長英
夏八木勲
高品格
神山繁
川地民夫
丹波哲郎
岡田英次
北村和夫
岩下志麻
緒形拳

脇役として、芦屋小雁、高橋長英、夏八木勲、高品格、神山繁、川地民夫、丹波哲郎、岡田英次、北村和夫、岩下志麻、緒形拳らが出演している分厚いキャスト。
映画好き、俳優好きにとっては、鑑賞中どこを見ても、(あ、あの俳優が出てる)(あの人とあの人のツーショットじゃないか!)などといった愉しみも持てる。
現在こうした愉しみが成立する映画ってあるか?
これは同時に、「映画をどう愉しむか?」「映画の愉しみ方」の問題でもある。
昨今多いのは映画だけではなく、小説でもテレビドラマでも、「この作品は泣けます」という路線で製作される作品が売れ線であることが極めて多い。
わたしなど、そのような路線の臭いを感じただけで避けて通るのだけれど、もちろん予見の多くはそうではないのである。

『陽炎』の話に戻ると、例えば現在この作品の樋口可南子やかたせ梨乃の役を演じられる女優が存在するだろうか?
この二人にしても、日本映画黄金期の大女優と比べると物足りない部分が目立つというのに。
言うまでもなく、「俳優の力」は演技力だけで語るべきものではなく、「人間そのものの力」が観客を圧倒するものなのだ。
それにしても『陽炎』の中の高品格がまたいいんだなあ。
背は低い、顔も良くない(笑)、いや、広い実で言えば、高品格は「素晴らしい顔」なのだけれど、例の「イケメン」ってやつではないでしょう。
男性の顔について褒める時に、「イケメン」しかボキャブラリーがないような女性はまあ、ロクな男とは付き合えないなと、もちろんこれは科学的実証に基づく仮設ではなくて、「わたしの常識的解釈」に過ぎないのだけれど。

いやいやいや、高品格の、表情は変えない、大袈裟な演技も一切しない・・・そんな中での豊かな人間性、そして凄味ですね。

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いっぷく

高品格は、清水の次郎長の竹居安五郎、刑事ドラマのヒラ刑事、印象に残っています。あのヒキガエルのような顔はまさにそういった役のためにあるのだと思いました。お金を払って鑑賞する映画なら、このぐらいの俳優陣で作ってほしいですね。
荻野目慶子は言うに及ばず、樋口可南子、かたせ梨乃、岩下志麻という女優陣が凄まじいですね。枕営業なんていいますが、この方々は営業ツールに枕を使うなんていうケチな話ではなく、女優たるやどれだけ男と寝たかで値打ちが決まる、といわんばかりの遍歴をお持ちで、まあこの時点で人妻で子供もいる岩下志麻がそうであることは一般には理解を得にくいかもしれませんか、篠田正浩監督がそれでよしとしているわけですから。もっとも篠田正浩監督も「監督たるやどれだけ女優と寝たかで値打ちが決まる」と思っているかもれませんが。

>「レイスモデル」という文字が光り輝いておりますね。

あはは。やはりそうでしたか。これは、レイスが巻いていた頃の腹巻きのようなベルトがNWAのベルトでは一番良かったという話ですね。馬場が取ったときも「レイスモデル」でしたね。メキシコのUWFの各階級のタイトルも「レイスモデル」をもとに作ってますね。
でも私は少し古い人間なので、真ん中が大きくなっているベルトのほうが好きなんですけどね。その意味では、馬場の持っていたインターナショナル選手権と、インターナショナルタッグ選手権はよかったですね。富士徽章製。たしかタッグの方は、ロサンゼルスから発注されて、そのモデルでロスの王座、つまりアメリカス王座のベルトは作られたそうですね。ロッキー・ジョンソンやチャボ・ゲレロが、インタータッグに似たベルトを巻いている写真は私も見たことがあります。

>こうして若い頃の元子夫人を見てみると、なかなか魅力的な女性だったということが分かります。顔立ちもとてもいいですね。

以前書いたかもしれませんが、私は実は元子ファンなのです。最近は妄想も……話し相手になったり肩をたたいてあげたりするシーンなんですけど(笑)。実際に関わりを持ったら、もしかしたら嫌いになったかもしれませんが、あくまでも容姿と断片的な情報だけでの話です。
リングでレスラーと並んでも堂々としているし、長い髪が似合うし、いつもにこにこ笑っているし、外国人レスラーの誕生パーティーもちゃんとやってあげて感謝されているし。いい夫婦だったとおもいます。もっとも、元子さんの母親はずっと馬場との結婚を許しておらず、馬場のほうが先に亡くなってしまったので、こんなことなら許しておけばよかったと母親は言ったというのですが、まあ後悔先に立たずですね。

>オープン選手権の時の外国人同士の「夢の対決」シリーズ

佐藤昭雄によれば、馬場は外国人レスラーにカネを惜しまないことで、アメリカの有力レスラーから信頼されるプロモーターというイメージを作り、それが唯一猪木に勝てる点だったと手厳しいのですが、新日本だって国際だって同じこと(外国人優遇)をしていたわけで、それをするからこそ、若手が修行に出ても各地のプロモーターが使ってくれるという理由があり、それは力道山時代からの伝統なのに、ちょっと佐藤の話は悪意が入っているかな、と気になりました。

by いっぷく (2018-06-28 05:16) 

TBM

UFCのナンバー大会は、DAZNでも
見れないようですが、9月からは
ベラトールの配信がDAZNで始まるようですね。
UFCはどんどん遠ざかっていきます...
by TBM (2018-06-28 22:09) 

hana2018

夏八木勲、神山繁、川地民夫、丹波哲郎、岡田英次、北村和夫、緒形拳と出演者の中にはすでに亡くなられている方が多く感じます。以上並べただけでも、キャストの豪華さはじゅうぶんながら。。近頃のテレビ、映画にしろ、製作本数の多さから大した仕事もしていないタレントやお笑い関係者までが、必要以上にもてはやされる風潮ってどうなのかなぁと思ってしまうのです。
五社英雄監督は、宮尾登美子の書いた作品も何本か撮っていましたね。
宮尾登美子と言えば、自身のルーツである実家の稼業・女衒となる訳ですが、現在仕事として存在しない女衒。
娘を売らなくては生きていけない食うや食わずの社会の貧しさ、諦めや情念に満ちた女たちのドラマチックな生き方が、外連味たっぷりに描かれたものと思いました。
樋口可南子とかたせ梨乃、タイプとしては全く違っているものの、肝が据わっている点では共通しているものと。
現在のぶりっ子じゃりタレ達に最も欠けている部分でしょう。

by hana2018 (2018-06-29 00:16) 

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