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恋人たちにとって最高の場所 「犬を連れた奥さん」 [ルコ的読書]

「素敵な場所」へ行きたがるカップルがよくいる。
まあそれは当然のことだけれど、相手のことを世界で一番大切だと思っているとき、ひとときでも相手と長くいたいと思っているとき、周囲の景色はスローモーションとなり、何もかもの微細な動きが意味を持っているように見える。
つまり、本当の恋愛中の二人にとって、よほどひどい場所以外は、どんな場所でも美しい場所になる。
いや、よほどひどい場所でさえ、特別な意味を持つことがある。
次の文章は、そんな場面を、短いが夢のようなスタイルで綴っている。

一人の男が近寄ってきた。きっと番人なのだろう。二人をちょっと眺めて立ち去った。こんな些細なことまでがたいそう神秘的に美しく思われるのだった。朝焼けに照らされ、もうあかりを消した気船が、フェオードシアからやって来るのが見えた。

                    「犬を連れた奥さん」チェーホフ著 小笠原豊樹訳
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