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小説 瑛次、神秘のアンチエイジング ブログトップ
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小説 瑛次、神秘のアンチエイジング 79 退屈  [小説 瑛次、神秘のアンチエイジング]

そう言えば、「坂本龍一のファン」というだけで余裕綽々の男もいたっけ。
「やっぱいいねえ。パリだねえ。これアンニュイって言うんでしょ」
あまりに素朴すぎる瑛次の声。
クレモンティーヌをかけると、すぐに良子は自分の想念の世界に没入する。
クレモンティーヌなど、遠の昔に、見なれ過ぎた家具ほどにも心に波風を起こさない。
波風どころか、もはや「日常」を「日常」以下の景色にさえ変えている気がする。
そうだ、クレモンティーヌを「退屈」と言う意味でアンニュイと表現するのなら合っているかもしれないが、「優雅な物憂さ」とはもはや無縁。
けれどクレモンティーヌを聴いて、「優雅な物憂さ」を感じる人も多いのだろうな、といつも良子は軽くため息をつく。
「そうだ、あいうえお体操してみない?」

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
実際の効果には、個人差などがあるものだと思われます。

小説 瑛次、神秘のアンチエイジング 78 坂本龍一 [小説 瑛次、神秘のアンチエイジング]

良子はいくつかの坂本龍一のアルバムを「そこそこ」気に入って聴いていたが、この発言を読んだ後、一切聴かなくなった。
結局は「インテリ風」のものにしか反応しない坂本龍一が、喩えようもなく俗物に見えてきたのだ。
(やっぱり坂本龍一はつまらない)
坂本龍一のことをいつも考えているわけではないが、
ふと思い出すたびに、(つまらない)と思ってしまう。
東京芸大出身でオスカー受賞。
世界中の誰もがリスペクトせざるを得ない。
(そりゃあ、余裕綽々のはずだろう)
そして良子は、「余裕綽々」の人間によく虫唾が走る。

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
実際の効果には、個人差などがあるものだと思われます。

小説 瑛次、神秘のアンチエイジング 77 「Y」&「For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?」 [小説 瑛次、神秘のアンチエイジング]

The POP GROUPは「POP」とは名ばかりの、まったく「POP」でないグループだ。
良子がティーンのときに、一番熱を上げたバンドだ。
今でもたまに聴く。
多くのパンク、ニューウェイブが時代とともにその神通力を失ってしまったのに対し、The POP GROUPの「Y」は、良子にとっていつまでも鮮烈だ。
「Y」だけではない。
「For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?」も大好きだ。
1曲目の「Forces of Oppression」から「Rob a Bank」まで、いつでも一気に聴く。
昔坂本龍一が誰かと比べて「The POP GROUPはつまらない」と言う意味の発言をしているのを読んだことがある。

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
実際の効果には、個人差などがあるものだと思われます。


小説 瑛次、神秘のアンチエイジング 76 The POP GROUP [小説 瑛次、神秘のアンチエイジング]

瑛次にとって、ビーズは音楽でもコルトレーンは音楽ではない。
多分生涯その感覚は変わらないだろう。
生涯とは言い過ぎかもしれない。
けれど音楽に限らず芸術を楽しむためにはそれなりの習慣や訓練が必要なのだと良子は確信している。
特に思春期にどのようなものに接していたかは重要だ。
残念ながら瑛次にはそのような「音楽の洗礼」経験はまったくないに違いない。
ロック系ならどうかと、試しにThe POP GROUPの「Y」を聴かせてみた。

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
実際の効果には、個人差などがあるものだと思われます。

小説 瑛次、神秘のアンチエイジング 75 コルトレーン [小説 瑛次、神秘のアンチエイジング]

世の中には「ささくれ立った音楽」という言い方で理解してくれる人もいるだろうし、同じ表現を使っている人もいるかもしれない。
けれど良子は「人との関わり合い」を期待せず、諦めも軽快にする習性がついている。
もはや「ささくれ立った音楽」という言葉を他人と共有するつもりはないのだ。
ジョン・コルトレーンは良子の「ささくれ立ちヒーロー」の一人だ。
瑛次に初めて聴かせたのもコルトレーンだった。
「A Love Supreme」。
音が出て来たとたん、瑛次は一瞬顔をしかめた。
しばらく当惑した表情を見せた後、「これ、音楽?」と口もとの歪んだ微笑を浮かべながら言った。
(やっぱり)

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
実際の効果には、個人差などがあるものだと思われます。

小説 瑛次、神秘のアンチエイジング 74 ささくれ立った音楽 [小説 瑛次、神秘のアンチエイジング]

1度の質問で「好きな音楽」に対する実験は終わった。
少なくとも良子の側で瑛次の音楽嗜好に合わせる気はない。
もう1つの実験は、瑛次に自分の好きな音楽を聴かせることだ。
どんな反応をするか見当はつくが、その中でも「受けつける音楽」「受けつけない」音楽があるだろう。
実は良子の好きなのは「ささくれ立った音楽」だ。
これは良子が自分で納得している表現なので、他人には使わない。
いや、かつて友人に「ささくれ立った音楽」と言ってみたが、「え、音楽がささくれ立ってるの?」と軽く笑われてしまった。
それ以来誰にもこの言葉を使っていない。

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
実際の効果には、個人差などがあるものだと思われます。

小説 瑛次、神秘のアンチエイジング 73 実験 [小説 瑛次、神秘のアンチエイジング]

「あ、これクレモンティーヌでしょ」
声が聴こえ始めると、早くも嬉しそうに反応する。
(単純な)といつも思いながら、その気持ちは軽蔑へ向かわない。
良子は自分を「人を軽蔑しやすい人間」だと思っているのだけど。
「パリって感じだよね~。アンニュイな午後に合うね~」
クレモンティーヌをかける度に同じようなことを言う。
「アンニュイ」という言葉も良子が教えるまで知らなかった。
良子はよく瑛次に実験をする。
音楽に関しては、もちろんまず「好きな音楽」を訊いた。
瑛次はどう答えただろう。
「音楽?ビーズ、サザンオールスターズ、竹内まりあ、ポルノグラフィティ、最近ではEXILEも聴くかな・・」
(・・・・・)

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
実際の効果には、個人差などがあるものだと思われます。

小説 瑛次、神秘のアンチエイジング 72 音楽の好み [小説 瑛次、神秘のアンチエイジング]

ロマンはかなりの音楽ファンだ。
良子が聴いたことのないミュージシャンをいくらでも知っている。
貸してくれるCDは中近東テイストの音が多く、「いわゆるパリ」とは程遠いもので、とても刺激的だ。
ではクレモンティーヌというのは・・。
瑛次は音楽に詳しくない。
つまり意識的に音楽を聴いた経験がない。
「どんな音楽が好き?」と尋ねたとき、彼が挙げたのはJ-POPばかりだった。
だからそれ以来瑛次とは音楽の話をしない。
ただ良子が音楽をかける。
瑛次の耳にも違和感なく入るだろう音楽を。
その一つがクレモンティーヌだ。

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
実際の効果には、個人差などがあるものだと思われます。

小説 瑛次、神秘のアンチエイジング 71 クレモンティーヌ [小説 瑛次、神秘のアンチエイジング]

良子はクレモンティーヌのCDを取り出す。
瑛次が気に入っている。
良子はずいぶん昔に何枚か買ったが、すぐに飽きた。
数年前から始めた週に1回のフランス語レッスンで、パリジャンで音楽にも詳しいロマンに訊いてみた。
「クレモンティーヌはパリで人気あった?」
ロランは良子と同い年、アンドレ・マルローに似ていると自称している。
「誰?」
「クレモンティーヌ」
「クレモンティーヌ・・誰?」
「ただクレモンティーヌだけど・・」
「誰、それ」
「歌手だけど・・。日本で人気があるんだけど。ツタヤとかにもいっぱいCD置いてるよ」
「そんな歌手、聞いたことないよ」
「えーー、ホント?」

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
実際の効果には、個人差などがあるものだと思われます。

小説 瑛次、神秘のアンチエイジング 70 白いシャツ [小説 瑛次、神秘のアンチエイジング]

「音楽でもかけようか」
しばらく自分の想念と遊びながら白髪の交じった瑛次の鬢をまさぐっていた良子が体を起こした。
瑛次はベッドから立ち上がった良子を目で追う。
良子は全裸のまま瑛次の前を歩くことはない。
ほんの少し部屋を歩くだけでも、必ず身近に置いてあるシャツやガウン、ときには薄いブランケットを引きずりながら体を隠す。
たとえその直前まで瑛次に「全て」を晒していたとしてもだ。
この日は長めの真っ白いシャツをはおり、CDを収納しているラックに向かう。
「これにしよっかな」

※この作品の中には現実のアンチエイジング方法や健康法などが出てきますが、その作品中で言及される効果などに関してはあくまで小説上のできごと、つまりフィクションであるとお考えください。
実際の効果には、個人差などがあるものだと思われます。

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