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●「母連れ狼」末尾ルコ(アルベール)、うたちゃん(母)との日々~山田洋二の凄み『男はつらいよ 寅次郎頑張れ!』。 [「言葉」による革命]


わたしはアートでロックでハードボイルドでポップでジェントルな末尾ルコと名乗り、しかし地元ではふつうアルベールなのですが、「初恋のヒヨコ」でもあります。原則いつも母(うたちゃん)と行動を共にし、車いすを押しておるそのイメージから「母連れ狼」とも名乗ります。
そう、最高の介護を超えるべく。


山田洋二監督の『キネマの神様』、「現在のジュリー」が主演格ということで(どうなんだ)と思っていたけれど、なかなかよかった。
ジュリー、しっかり演技してます。
『キネマの神様』もそうだけど、山田作品、セットの中の小さな小物の配置まで揺るがせにしない、小津安二郎とまではいかないけれど、そうした厳しさを自在に発揮できる現在数少ない監督の一人だから、高齢だけどもっと映画、作ってほしい。
寺島しのぶが『キネマの神様』の現場入りした時、(うわあ、映画だ!)と感じたという、これですやはり。
そうそう、『キネマの神様』は寺島しのぶの演技も大いに見もの。

・・・


わたしが、「あまりに凄い!」と雷撃を受けた『男はつらいよ 寅次郎純情詩集』と比べると、『寅次郎頑張れ!』は軽快な雰囲気で展開する。
ところがクライマックス、つまり中村雅俊が姉役の藤村志保に、「寅さんと結婚するつもりがないのなら、送ってもらうべきではない」と進言するシーンから、さくらがまた旅立つ寅次郎を見送るシーンまでだが、この集中力・凝縮力は一体何なのだろう。
これができるから山田洋次は「巨匠・名匠」の名を欲しいままにしているのだろうが、あたかも「奈落落ち」のような急展開、溢れ出る感情、冴え渡る映像である。
「溢れ出る感情」と書いたけれど、当然ながら誰も号泣も絶叫もしない。
表上、そして身体のデリケートな動き、あるいは声のトーンなどで丹念に、しかし抉り出すように感情を表出させていく。
もちろん、「いつ。どこで、何を映し出すか」綿密に計算され尽した山田洋次ならではの演出あって、俳優たちの「存在そのもの」がこれ以上ないまでの高みに達するわけだが。
アカペラでシューベルトの「菩提樹」が歌われる中、藤村志保の(寅さんと結婚なんて、夢にも考えたこともない)という表情の残酷さ。
しかも台詞ではそんなこと、一切語らせないのだ。

「ひとつの恋が終わる時」の、まるで「自分の存在そのものが否定される」ような、ほとんど恐怖とも言える感覚は、経験した人であれば誰でも理解できるだろう。
『男はつらいよ 寅次郎頑張れ!』のクライマックスは、有史以来人間が普遍的に体験し続けている「恋の終わりの恐怖」を、あまりに的確に描き切っている。

そして『男はつらいよ 寅次郎頑張れ!』の中でも見られるのが、

「何も言わずに空を見つめる寅次郎のクローズアップ」だ。

これが何とも凄い。
いつも明るく元気な寅次郎が、ここでも表情を作ったりはしないが、

「自らの人生そのものの重みに対して、懸命に堪えている」ように見えるのだ。

(ああ、どんなに頑張っても、人生うまいこといかないな・・・)と、嘆きはしないし、諦めもしないけれど、時に(この人生に耐えられるのかな?)と疑問も過る、そんな表情。
しかし寅次郎は必ずエピローグで新たな旅先で、新たな笑顔を振りまき始める。

こうして『男はつらいよ』を鑑賞していると、車寅次郎が、

「どんなに頑張っても、人生が上手くいかない人間」を代表し、象徴する存在にも感じられてくる。
そして寅次郎はこうも語りかけてきてはいないだろうか。

「そもそも誰の人生が上手くいっていると言うんだい?みんな笑顔の裏に隠しているのさ。そして人生は、上手くいかないから味わいが深いっていうもんだ」と。

・・・

『アデルの恋の物語』の名台詞

「若い娘が海を越え、旧世界から新世界へ行く冒険、私はそれをする」



『バベットの晩餐会』の名台詞

「芸術家は貧しくならないんです」



眠狂四郎(市川雷蔵)の名台詞

「それはそれ 恋は恋」



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